2009年 01月 25日
2009年1月20日という日
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かつて奴隷として連れて来られ、人間の尊厳を踏みにじられ、言われの無い罪を着せられては殺され、理由なくリンチされては殺され、凄惨な扱いを受けながら1歩1歩闘ってきた人達の子孫が、あの日感無量の涙を静かに流す姿を見て私ももらい泣き。
長い長い選挙戦の間、確かオバマ氏は余り人種的なことは前面に出さないでいたと思うのだけれど、先立って行われたリンカーン・メモリアルでのWe Are One:Opening Inaugural Celebrationや就任舞踏会でのアーチストの面々、招待された人達、セレモニーの演出、そしてこの歴史的な瞬間を一目見ようと全米各地から集まって来た多くの一般アフリカ系米国人を見ると、ここに来て黒人パワー炸裂だなぁ、って。
実際のところ、「まったく黒人(の男)ってのはロクなもんじゃない」と言われ続けて、「どうせ俺達なんか」とまでは言わなくても、黒人であることの誇りの片隅には何かずっと自信を持てないでいた、可能性が見えずにいた、諦めていた部分がいつもあったんじゃないだろうかと思うのだけれど、それが国家元首になったのだから涙も流れようというもの。

2009年1月20日。
この日を共有した人達は、この先また自信や結束を失ったり、信念がぐらついたり、国が困難に陥った時に立ち戻る、「あの日」が出来たのではないだろうかとちょっと羨ましい気も。そして何よりも涙を流し、喜びと希望と誇りに輝いたお父さんや母さん、お爺さんやお婆さんをこの日見ていた子供達にとって、とっても大切な大きな大きな意味のある未来への贈り物になるのではないかと。大きくなって挫けそうになったら、この日を思い出してね。
振り返って私を含めた日本の大人は、果たして子供達にそういう未来への贈り物を残すことが出来るのかどうか、そういう選択を出来るのかどうかとも思ってしまったり。
それぞれの物語を背負った人達が、それぞれの想いで集っていたのでしょうけれど、私が就任式のちょっと前に「あぁ、この人達も招待されたんだな、嬉しいだろうな」と思ったのが、The Tuskegee Airmenの面々が招待されたというニュースを知った時。
「ブラインド・ヒル」という邦題でTV映画にもなっている様なので知っている人もいるかもしれないけれど、まだまだ人種差別のひどかったアメリカ軍において、第二次世界大戦初の黒人戦闘機部隊となり華々しい戦果をあげた部隊。
私が何故このタスキーギ・エアメンのことを知ったかというと、今は日本を離れてしまったDaveが、「タスキーギは初の黒人だけの航空部隊があったところで、凄い活躍をしたんだ!パイロットになりたい黒人の憧れ!」みたいなことを、それはそれは目を輝かせながら話してくれたから。何を隠そうそういう彼はそのタスキーギ学校出身で、その後パイロットを夢見て米空軍に。残念ながらとある理由でパイロットにはなれず、一昨年まで横田に駐留していたけれど、運良く母校に仕事を見つけて今は再びタスキーギに。
このThe Tuskegee Airmenの活躍に対して多くのメダルが授与されているそうだけれど、国家のために貢献した市民に政府・議会から贈られる最高の栄誉であるCongressional Gold Medalが授与されたのは戦後60年以上経った2007年の3月になってから。
They were fighting two wars: One was in Europe, and the other took place in the hearts and minds of our citizens.
(彼らは2つの戦争を戦った。1つはヨーロッパ戦線で、もう1つは我々国民の心にある差別と)
Even the Nazis asked why African American men would fight for a country that treated them so unfairly. Yet the Tuskegee airmen were eager to join up.
(あのナチにして、'なぜ黒人達はあれほどまでに彼らを不当に扱う国の為に戦うのか'と言わしめたにもかかわらず、それでもthe Tuskegee airmenは国家に貢献することを熱望した)
I would like to offer a gesture to help atone for all the unreturned salutes and unforgivable indignities. And so, on behalf of the office I hold, and a country that honors you, I salute you for the service to the United States of America.
(全ての返礼されることのない敬礼と許し難い侮辱への償いとなることを願って、そしてアメリカ合衆国への貢献に対し敬意を表し- 敬礼)

彼らが背負って来た歴史や闘いや功績を胸に、この米国初の黒人大統領の就任式に出席できたという想いを推し量ると、この私でも瞼が厚くなると言うか、感無量。
話が就任式のことからTuskegee airmenのことに逸れてしまったけれど、あともう1つ。この方がもしまだ生きていらっしゃったら、どんなにかこの瞬間を喜んだだろう。いや、長い長い闘いの道のりで、不当にも命を奪われなければならなかったその他の多くの黒人たちと、きっと天国でお祝いをしているに違いない、と思った一つの光景。
ワシントンで行われる就任式へ向かうオバマ大統領のパレードの車列に、あのローザ・パークスのバスのレプリカも参加していたんですね。

残念なことに2005年に92歳で亡くなってしまったけれど、彼女もタスキーギ出身だったとは知らなかった。この車列と共に就任式に向かったバスには、ローザ・パークスさんやこの日を見ることなく亡くなっていったその他大勢の黒人達の魂が乗っていたのかも。
こうやって1つ1つの出来事が「この日」に繋がったと思うと、誇りと希望に顔を輝かせて「awesome!」(とにかく素晴しい!)、「incredible!」(信じられないほどすごい!)と連呼する人々の様子を見ては私も涙、涙。あぁ、出来ることなら私もあの瞬間を共有したかったな、なんて他所の国のことなのに、何でだろう。「アメリカの祝日で僕が祝うのはキング牧師生誕の日だけ」と言っていたあの人、大学で黒人の歴史を教えていて、大統領選出の投票後に「Americans are much smarter now, than 4 years ago and WE all want positive changes.」と言っていたあの人、普段は政治の話は余りしないけれど、MSNチャットの他人に公開するメッセージ欄にいきなりPresident Obama!と表示したあの人、「信じていい、とにかくObamaの演説は凄い!」と熱弁を振るっていたあの人、そして今またタスキーギで自分と同じようにThe Tuskegee airmenの後に続く若者の手助けをして頑張っているあの人・・・みんなそれぞれの想いを胸にこの日を迎えたのだろうな。
by sohla
| 2009-01-25 18:54
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