2007年 02月 16日
新宿歴史博物館
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平日に時間がとれるのも今週までと言うことで、以前から行って見たいと思っていた四谷3丁目にある「新宿歴史博物館」へ行って来ました。
風がちょっとあったお陰でちょっと冷たかったけれども、空には雲ひとつ無い晴天。空の上の方、ビル越しに見える下の方の空じゃなくて、頭をカクッと後ろに倒して見上げる頭上の空が、驚くほど綺麗で真っ青な青空でしたよ。ポケッと見上げて、何だか嬉しくなってニンマリしちゃう空でした。
この歴史博物館は四谷3丁目から歩いて8分ほど。新宿通りから裏道へ入った静かな場所です。施設自体はそれほど大きくなく、多分展示品も多くないと思うんですが、石器時代から中世、江戸、昭和、近代と模型あり、ボタンを押すと音楽が流れたり、映像が見れたりと楽しく見ることが出来ます。そして、何よりも私は自分が住んでいる街なので、「えぇ?ここは昔こんなだったのかー」とか「そうそう、知ってる知ってる、そうなのよ」と、身近で現実的、でもタイムスリップして昔の街を覗き見ているような楽しさが一番でしたよ。
常設展に入ると直ぐに、内藤新宿の復元模型があるんです。楽しいですよね、こういう模型、私大好きなんです。なので、ガラスにおでこゴッツンする程顔を近づけて「あぁ、縄跳びしてるー」とか「牛と一緒に畑を耕してのどかだなー」とか「この町に立って見上げる空は大きかったんだろうなー」とか思いながら見入っちゃいました。
写真右は四谷大木戸、現在の四谷4丁目辺りだそう。江戸市街地へ入る検問所みたいなものなので、通行手形を見せて出たり入ったりしていたんでしょうね。こうやって見ると、通行手形が無いと出入り出来ないのは不自由ですけれど、夜間に閉まる門が幾つかの町単位にあるのも安心で、誰が住んでいるのかも分って防犯上良さそうですね。
模型の奥には江戸時代の商家。
そうそう、展示ごとに自由に取って良い"常設展示解説シート"というのが置かれていて、全部で20種類。①~⑩は展示ごとに、⑪~⑳は展示室外にまとめてラックに入っています。
ちなみに、この江戸の暮らしと新宿の商家の展示解説シート⑥は、
"江戸時代には毎月なんらかの行事があり、今より以上に盛んに行われました。その時々の健康、平穏無事、子孫繁栄を願うその心は、科学や医療が進んでいない時代にはより切実なものでした"(抜粋)
とあり、例として現在でも色々な年中行事を行っていて、四谷で商売をしていた菓子屋(野口家)に伝えられた行事と料理の一覧が載ってます。「あぁ、今でもやってるやってる」といったお馴染みのものから「へぇー、こんなことするんだ」というものまであって興味深いです。
これ、お菓子の木型なんですけれど、彫が細かくって溜息。印刷物の版も展示してあったんですけれど、よくもまぁ流れる様な文字を滑らかに彫れるもんだなぁ・・・と。便利な機械も何もないので当時は手仕事が当たり前の事だったんでしょうけれど、その分「道具を作るプロ」とか「道具を使うプロ」とか、生活用品一つ作るにしても創意工夫をして、結果的にそれが素晴らしい技になっていったというのもあるんでしょうね。手仕事のプロが沢山いたんだろうなーと思うと何だか豊かで羨ましい感じです。
昭和初期の新宿の展示には、車両を製造した当時の図面や、解体された部品などを使って復元された市電"チンチン電車"が展示されてます。これ、京王線の下高井戸駅から新玉川線の三軒茶屋駅までを結ぶ世田谷線、今も残るチンチン電車そのもの。
中学・高校生の頃までは時々この世田谷線を利用していたので、何だか懐かしいんですけれど、昔はこれが東京の街を網の目の様に走っていたんですよね。「出発進行ー、チンチン、ガーッ」というあの音も、当時の街の喧騒と重なって結構な騒音だったらしいですよ。
こちらは金子さんというお宅の文化住宅(笑)。設定では地方から出て来た大学出の30代前半のサラリーマンと奥さん、子供2人。月給は100円でこの借家の家賃が18円、食費が30円という設定だそうです。
写真は、そんな小さな和風住宅に洋風の応接室を取って付けた様な文化住宅の台所。当時のサラリーマンにとっては、こういった洋瓦をのせた洋間のある家はステイタスシンボルだったそうです。昭和10年頃なので今から約70年も前ですよね。
玄関を入ると、4.5畳の茶の間からは浪曲や同時の早慶戦の実況中継がラジオから流れるようになっていて、座卓の上には夕食の湯豆腐(だったかな?)が用意されていて一家団欒の様子が目に浮かびます。まぁ、和室の造りはそれほど変化しようがないし、台所は劇的に近代的になったものの、こういった家の造りは今でも結構ありますよね。
今は和室の無い家も多いみたいですけれど、この4.5畳の茶の間なんて、「あ、これウチと同じー」とか「昔はこんな部屋があったー」と言う人も多いんじゃないでしょうかね。
文化住宅は当時のサラリーマンのステイタスシンボル、若者の憧れということだった様ですけれど、私はこの住宅洋式が日本の住宅を安っぽいものにしてしまったなーと思っているんです、実は。中途半端な洋風と、簡易和風みたいなものの合体で、その後の住宅洋式が、洋風・和風のどちらもがフェイクっぽくなってしまったと言うか・・・。
でも、それが日本の庶民住宅の歴史であり変遷であり発展でもあるんでしょうね。これは住宅だけではなくて社会全体がそういう方向で、悪く言えばこの時辺りから、それまであった日本らしさが急速に無くなって行ったのかな、って感じるんですけれど。
その外にも、昔の伊勢丹が改装記念に出した葉書や、あのカレーの中村屋で当時のボーイさん達が着ていた制服や写真や、当時のカフェの模型や、ムーランルージュの様子や、新宿で出土された石器・縄文・弥生時代の出土品や、地域ゆかりの文学者達、新宿の伊勢丹、三越、ほてい屋、二幸、高野果実店など繁華街など、さすがに地域に密着した細々とした展示があって、「あ、これは子供の頃行ったことがある」とか「こんなのがあったんだ」と身近に感じられて楽しいです。
個人的にとても印象に残っているのは、展示品というよりは新宿のエリアごとの変遷を写真で見せた年表のようなものの中にあった、オレインブルグ日本遠征記の中の挿絵の1コマなんでしょうか、昔の美しい池や滝があった頃の「十二社」の絵です。
昔、角筈・淀橋・十二社と言われていた、現在の熊野神社や中央公園辺りには十二社の森といって池や滝があって、多数の茶屋ができ景勝地として賑わっていたそうで、江戸の錦絵や江戸名所図会には書かれているんですけれど、その後の淀橋浄水場の埋め立てや、水質汚染や、西新宿地区の再開発で今は何一つ残っていないし、面影も想像出来ないんですが、確かに美しい景勝地だったらしいんです。(十二社と熊野神社の歴史)
で、そのオレインブルグ日本遠征記の小さな白黒の十二社の池の絵は、池に張り出して作られた質素な小屋があって、周りは鬱蒼とした木々に囲まれている、何とも言えない秘境の楽園の様な、異国の様な不思議な雰囲気に書かれているんです。これを見てハッと思い出してダブったのが、去年バリで行った現地の魚の養殖場。釣りが出来る様に、池には竹で組んだ質素な小屋が張り出していて、その小屋の床は竹組み、屋根は茅葺・・・さすがに周りの景色は木々が鬱蒼としてはいないんですけれど、正にあの光景だ!と思ってビックリしました。
思わずジッと立ち止まって、昔の十二社、バリ島と時空を越えてしまった感じです(笑)。新宿は様々な文化、文明、芸術、商売、生活のエネルギーが爆発している様な土地だったと思うんですけれど、すっかり近代的に様変わりした街並みからは昔の様子は想像もつかないですね。何だか今私の居る場所から、それこそタイムスリップした様でドキドキ・ワクワクの数時間でした。規模は小さいとしても、こうやってある1つの地域についての歴史博物館があると言うのは、その街を知るのに、そしてより身近に感じるのに凄くいいですね。何だか愛着がもっとわいて、色々なことに興味が出てきちゃいました。
風がちょっとあったお陰でちょっと冷たかったけれども、空には雲ひとつ無い晴天。空の上の方、ビル越しに見える下の方の空じゃなくて、頭をカクッと後ろに倒して見上げる頭上の空が、驚くほど綺麗で真っ青な青空でしたよ。ポケッと見上げて、何だか嬉しくなってニンマリしちゃう空でした。
この歴史博物館は四谷3丁目から歩いて8分ほど。新宿通りから裏道へ入った静かな場所です。施設自体はそれほど大きくなく、多分展示品も多くないと思うんですが、石器時代から中世、江戸、昭和、近代と模型あり、ボタンを押すと音楽が流れたり、映像が見れたりと楽しく見ることが出来ます。そして、何よりも私は自分が住んでいる街なので、「えぇ?ここは昔こんなだったのかー」とか「そうそう、知ってる知ってる、そうなのよ」と、身近で現実的、でもタイムスリップして昔の街を覗き見ているような楽しさが一番でしたよ。
模型の奥には江戸時代の商家。
そうそう、展示ごとに自由に取って良い"常設展示解説シート"というのが置かれていて、全部で20種類。①~⑩は展示ごとに、⑪~⑳は展示室外にまとめてラックに入っています。
ちなみに、この江戸の暮らしと新宿の商家の展示解説シート⑥は、
"江戸時代には毎月なんらかの行事があり、今より以上に盛んに行われました。その時々の健康、平穏無事、子孫繁栄を願うその心は、科学や医療が進んでいない時代にはより切実なものでした"(抜粋)
とあり、例として現在でも色々な年中行事を行っていて、四谷で商売をしていた菓子屋(野口家)に伝えられた行事と料理の一覧が載ってます。「あぁ、今でもやってるやってる」といったお馴染みのものから「へぇー、こんなことするんだ」というものまであって興味深いです。
昭和初期の新宿の展示には、車両を製造した当時の図面や、解体された部品などを使って復元された市電"チンチン電車"が展示されてます。これ、京王線の下高井戸駅から新玉川線の三軒茶屋駅までを結ぶ世田谷線、今も残るチンチン電車そのもの。
中学・高校生の頃までは時々この世田谷線を利用していたので、何だか懐かしいんですけれど、昔はこれが東京の街を網の目の様に走っていたんですよね。「出発進行ー、チンチン、ガーッ」というあの音も、当時の街の喧騒と重なって結構な騒音だったらしいですよ。
こちらは金子さんというお宅の文化住宅(笑)。設定では地方から出て来た大学出の30代前半のサラリーマンと奥さん、子供2人。月給は100円でこの借家の家賃が18円、食費が30円という設定だそうです。
写真は、そんな小さな和風住宅に洋風の応接室を取って付けた様な文化住宅の台所。当時のサラリーマンにとっては、こういった洋瓦をのせた洋間のある家はステイタスシンボルだったそうです。昭和10年頃なので今から約70年も前ですよね。
玄関を入ると、4.5畳の茶の間からは浪曲や同時の早慶戦の実況中継がラジオから流れるようになっていて、座卓の上には夕食の湯豆腐(だったかな?)が用意されていて一家団欒の様子が目に浮かびます。まぁ、和室の造りはそれほど変化しようがないし、台所は劇的に近代的になったものの、こういった家の造りは今でも結構ありますよね。
今は和室の無い家も多いみたいですけれど、この4.5畳の茶の間なんて、「あ、これウチと同じー」とか「昔はこんな部屋があったー」と言う人も多いんじゃないでしょうかね。
文化住宅は当時のサラリーマンのステイタスシンボル、若者の憧れということだった様ですけれど、私はこの住宅洋式が日本の住宅を安っぽいものにしてしまったなーと思っているんです、実は。中途半端な洋風と、簡易和風みたいなものの合体で、その後の住宅洋式が、洋風・和風のどちらもがフェイクっぽくなってしまったと言うか・・・。
でも、それが日本の庶民住宅の歴史であり変遷であり発展でもあるんでしょうね。これは住宅だけではなくて社会全体がそういう方向で、悪く言えばこの時辺りから、それまであった日本らしさが急速に無くなって行ったのかな、って感じるんですけれど。
その外にも、昔の伊勢丹が改装記念に出した葉書や、あのカレーの中村屋で当時のボーイさん達が着ていた制服や写真や、当時のカフェの模型や、ムーランルージュの様子や、新宿で出土された石器・縄文・弥生時代の出土品や、地域ゆかりの文学者達、新宿の伊勢丹、三越、ほてい屋、二幸、高野果実店など繁華街など、さすがに地域に密着した細々とした展示があって、「あ、これは子供の頃行ったことがある」とか「こんなのがあったんだ」と身近に感じられて楽しいです。
個人的にとても印象に残っているのは、展示品というよりは新宿のエリアごとの変遷を写真で見せた年表のようなものの中にあった、オレインブルグ日本遠征記の中の挿絵の1コマなんでしょうか、昔の美しい池や滝があった頃の「十二社」の絵です。
昔、角筈・淀橋・十二社と言われていた、現在の熊野神社や中央公園辺りには十二社の森といって池や滝があって、多数の茶屋ができ景勝地として賑わっていたそうで、江戸の錦絵や江戸名所図会には書かれているんですけれど、その後の淀橋浄水場の埋め立てや、水質汚染や、西新宿地区の再開発で今は何一つ残っていないし、面影も想像出来ないんですが、確かに美しい景勝地だったらしいんです。(十二社と熊野神社の歴史)
で、そのオレインブルグ日本遠征記の小さな白黒の十二社の池の絵は、池に張り出して作られた質素な小屋があって、周りは鬱蒼とした木々に囲まれている、何とも言えない秘境の楽園の様な、異国の様な不思議な雰囲気に書かれているんです。これを見てハッと思い出してダブったのが、去年バリで行った現地の魚の養殖場。釣りが出来る様に、池には竹で組んだ質素な小屋が張り出していて、その小屋の床は竹組み、屋根は茅葺・・・さすがに周りの景色は木々が鬱蒼としてはいないんですけれど、正にあの光景だ!と思ってビックリしました。
思わずジッと立ち止まって、昔の十二社、バリ島と時空を越えてしまった感じです(笑)。新宿は様々な文化、文明、芸術、商売、生活のエネルギーが爆発している様な土地だったと思うんですけれど、すっかり近代的に様変わりした街並みからは昔の様子は想像もつかないですね。何だか今私の居る場所から、それこそタイムスリップした様でドキドキ・ワクワクの数時間でした。規模は小さいとしても、こうやってある1つの地域についての歴史博物館があると言うのは、その街を知るのに、そしてより身近に感じるのに凄くいいですね。何だか愛着がもっとわいて、色々なことに興味が出てきちゃいました。
by sohla
| 2007-02-16 12:53
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