2017年 09月 24日
『生誕120年東郷青児展』@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
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新宿、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の『生誕120年東郷青児展 』内覧会へ参加してきました。


学芸員さんのギャラリートークをはさみ作品を見ていくと、若干18歳の1915年に初個展出品の「コントラバスを弾く」、翌年の二科展初出品で二科賞受賞の「パラソルさせる女」など、自由な形と色彩で自己表現した前衛的絵画から、戦後に広く親しまれた「東郷様式」が確立される1950年代まで、油彩、素描、本の装丁、雑誌、壁画、舞台装置、イラストなどを通し、様々な展開を見ることが出来ます。
右「手術室)(1930年)、左「椅子」(1933年)

帰国後から数年、女性遍歴とそのスキャンダルに事欠かない時期の絵は、まだ前衛的でシュルレアリズムの不思議な雰囲気。それでも色数は限られ、シンプルな線や構成。後の"東郷様式"に向かう試みの時期だったんでしょうかね。
時代と言えば、1927年の金融恐慌から不況、景気後退、1929年は世界もNY株式市場大暴落から世界恐慌拡大、また戦火への足音も高めはじめ、1931年満州事変勃発、1936年2.26事件、1937年日華事変、1941年には遂に太平洋戦争開戦と、社会も変わった激動の時期。


著作権の関係で写真を載せることは出来ないのですが、家族で見て楽しむような百貨店の壁画も手掛け、京都・丸物百貨店の六階大食堂の壁を飾った藤田嗣治「海の幸」(1936年)と、その対になる東郷青児「山の幸」(1936年)の2つの大作も並べて展示され、2人の競作を見ることができます。
写真は青児「山の幸」、その右隣りに「海の幸」…写真は敢えてカット。現在はシェラトン都ホテル大阪所蔵だそうで、この機会に是非今回の展示で。
※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※

この頃には既に東郷様式が確立され、お馴染みの柔らかな曲線と淡い色彩で描かれた昭和モダンの美人画。
[東郷様式とは]
・誰にでもわかる大衆性
・モダーンでロマンチックで優美、華麗な感覚と詩情
・油絵の表現技術に見られる職人的完璧さと装飾性

ここまでくると、お馴染みのロマンティックな女性画。包装紙や菓子箱の乙女チックな印象が強いけれど、実際に作品を見ると本当に優美で華麗。抑え目の色使いは決して子供っぽくなく甘美。
社交的でお洒落なモダンボーイだったということも、時代もあったのかもしれないけれど、「あぁ、美術の教科書に載ってたよね」じゃなくて、「家に包装紙がいっぱいあった」とか、「ビルの壁画を見ながら学校通ってた」とか、「ホテル浴場でタイル画見ながら湯船につかったことがある」とか、「百貨店の食堂で絵をみながら食事した」とか、そういう生活や日常の中で記憶に残る、芸術を大衆に広めた芸術家は、考えてみると東郷青児をおいて他にいなさそう。
様々な作品が見応え十分、美しい展覧会は東郷青児の作品とその人物を改めてじっくりと知る良い機会です。
あ、そうそう。
ショップでは東郷様式のモダン美女をモチーフにした数々のグッズ、東郷青児の作品が缶の蓋と包装紙になっているタカセのクッキーも販売されてます。また、会場入り口にはフォトスポットも設置されているので、「バイオレット」と一緒に額に収まるチャンスです(笑)。

『生誕120年東郷青児展』
会 期:2017年9月16日(土)~ 11月12日(日)
休館日:月曜日
※ただし9/18、10/9は開館、翌火曜日も開館
会 場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階(新宿)

※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※
柔らかな曲線と淡い色彩で描かれた昭和モダンの美人画は、洋菓子店の包装紙などでもお馴染みで、多くの人がいつかどこかで見た記憶があるのではないでしょうか。私が子供の頃、実家に東郷青児の綺麗な包み紙があったような記憶が。

第1章 内的生の燃焼 1915-1928年
第2章 恋とモダニズム 1928-1930年代前半
第3章 泰西名画と美人画 1930年代後半-1944
第4章 復興の華 1945-1950年代
様々な作品を見ていると東郷青児という人物やその人生に興味が湧いてくるのだけれど、官能的で甘美なものに惹かれて行く以前(というより官能と甘美は本青児の中にあった要素だと思うけれど)の初期の絵はキュビズム的で未来派風。あの洋菓子店や喫茶店の包装紙で目にした柔らかで淡い美人画のイメージとは随分と違うんですね。
「コントラバスを弾く」(1915年)は美大を出たわけでもない青児が独学で描いたのではないかと思うのだけれど、パリ留学時代に描いたものより個人的には面白くて惹かれます。18歳でこういう絵が描けるとは。
写真右は重厚な色彩と旅芸人の哀愁が融和した代表作「サルタンバンク」(1926年)。「この絵が出来上がった時は天下を取ったように嬉しかった。早速ピカソを僕のアトリエに引っ張って来て見てもらった。<略> 藤田[嗣治]もわざわざ見に来てくれた」と、当時ピカソや藤田と交流があった東郷青児の言葉。
パリ留学で最先端の芸術に触れ創作生活を謳歌する生き生きとした感じ、喜びを素直に表現する様子が目に浮かんでクスッとしたのだけれど、自分の感情に正直で純粋な人だったんでしょうかね。

様々な作品を見ていると東郷青児という人物やその人生に興味が湧いてくるのだけれど、官能的で甘美なものに惹かれて行く以前(というより官能と甘美は本青児の中にあった要素だと思うけれど)の初期の絵はキュビズム的で未来派風。あの洋菓子店や喫茶店の包装紙で目にした柔らかで淡い美人画のイメージとは随分と違うんですね。
「コントラバスを弾く」(1915年)は美大を出たわけでもない青児が独学で描いたのではないかと思うのだけれど、パリ留学時代に描いたものより個人的には面白くて惹かれます。18歳でこういう絵が描けるとは。

パリ留学で最先端の芸術に触れ創作生活を謳歌する生き生きとした感じ、喜びを素直に表現する様子が目に浮かんでクスッとしたのだけれど、自分の感情に正直で純粋な人だったんでしょうかね。
※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※


右から、「黒い手袋」(1933年)、「テニスコート」(1934年)、
「扇」(1934年)
帰国後から数年、女性遍歴とそのスキャンダルに事欠かない時期の絵は、まだ前衛的でシュルレアリズムの不思議な雰囲気。それでも色数は限られ、シンプルな線や構成。後の"東郷様式"に向かう試みの時期だったんでしょうかね。
時代と言えば、1927年の金融恐慌から不況、景気後退、1929年は世界もNY株式市場大暴落から世界恐慌拡大、また戦火への足音も高めはじめ、1931年満州事変勃発、1936年2.26事件、1937年日華事変、1941年には遂に太平洋戦争開戦と、社会も変わった激動の時期。

ところで、写真右が東郷青児19歳、そして左は未来派のマリネッティと24歳の青児イタリアで。いやー今時のお育ちの良い素敵男子と比べても引けをとらない男前。後に女性関係やそのスキャンダル等でも話題になったようだけれど、絵が描けておまけにスタイリッシュで華があったら社会も女性も放っておくハズがない(笑)。当人はそれを自覚していたのかもしれないけれど。

関東大震災の復興からモダン都市に変貌していった時期、1930年には"形式の自由と精神の明朗さを約束する新演劇"を目指す蝙蝠座(こうもりざ)の舞台装置、それ以外にも文筆、翻訳、挿絵、本の装丁、雑誌、壁画、イラストとマルチな才能を発揮。

1935年、1936年頃の婦人雑誌の表紙や広告。カラーで女性の顔のクローズアップが描かれ乙女チック。写真左下、1939年の「ホームライフ」装画までいくと、色数は多いものの、淡く柔らかい曲線や女性の表情など、随分と東郷様式に近づいている感じですね。


写真は青児「山の幸」、その右隣りに「海の幸」…写真は敢えてカット。現在はシェラトン都ホテル大阪所蔵だそうで、この機会に是非今回の展示で。
そして終戦後、仲間に呼びかけ1946年には二科展再開。復興期の装飾壁画の第一線に立ったとのことで、写真下はモザイクタイル絵の「裸婦」(1952年)。
当時の伊奈製陶(現LIXIL)が1947年に1cm角のカラータイル「アートモザイック」を商品化。写真の裸婦は東郷青児が下絵を提供、全20色、13600枚を使用し描かれているそうで、同じ柄のタイル画が熱海の富士屋ホテルの浴場に設置されたそう(現存しない)。展示はINAXライブミュージアム所蔵。

[東郷様式とは]
・誰にでもわかる大衆性
・モダーンでロマンチックで優美、華麗な感覚と詩情
・油絵の表現技術に見られる職人的完璧さと装飾性

※ 美術館より特別に写真撮影の許可を頂いています ※
ここまでくると、お馴染みのロマンティックな女性画。包装紙や菓子箱の乙女チックな印象が強いけれど、実際に作品を見ると本当に優美で華麗。抑え目の色使いは決して子供っぽくなく甘美。
社交的でお洒落なモダンボーイだったということも、時代もあったのかもしれないけれど、「あぁ、美術の教科書に載ってたよね」じゃなくて、「家に包装紙がいっぱいあった」とか、「ビルの壁画を見ながら学校通ってた」とか、「ホテル浴場でタイル画見ながら湯船につかったことがある」とか、「百貨店の食堂で絵をみながら食事した」とか、そういう生活や日常の中で記憶に残る、芸術を大衆に広めた芸術家は、考えてみると東郷青児をおいて他にいなさそう。
様々な作品が見応え十分、美しい展覧会は東郷青児の作品とその人物を改めてじっくりと知る良い機会です。

ショップでは東郷様式のモダン美女をモチーフにした数々のグッズ、東郷青児の作品が缶の蓋と包装紙になっているタカセのクッキーも販売されてます。また、会場入り口にはフォトスポットも設置されているので、「バイオレット」と一緒に額に収まるチャンスです(笑)。

会 期:2017年9月16日(土)~ 11月12日(日)
休館日:月曜日
※ただし9/18、10/9は開館、翌火曜日も開館
会 場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
損保ジャパン日本興亜本社ビル42階(新宿)
by sohla
| 2017-09-24 18:26
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