2017年 02月 26日
『屏風にあそぶ春のしつらえ』展@泉屋博古館 分館
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この週末から始まった『屏風にあそぶ春のしつらえ - 茶道具とおもてなしのうつわ』展のブロガー内覧会が、先週水曜日開催され一足早く参加して来ました。
※ 掲載写真は美術館より特別に許可をいただいて撮影しています
屏風と茶道具を中心に春を感じさせる名品がずらりと展示されており、やはり最初に目を引くのは数々の屏風。その中でも「二条城行幸図屏風」(江戸時代・17世紀)。
寛永3年(1626年)に、後水尾天皇が三代将軍・徳川家光と大御所・秀忠の招きに応じ、京都・二条城に行幸する様子を描いた、金色に輝く六曲一双。
つい最近描かれたのではないかと思うほど保存状態が良く、描かれている行幸の列と群衆は総勢3000人以上、衣装、髪形、持ち物など、これでもか!というほど丁寧に書き込まれたディテールが鮮明で、行列が動きだし人々の喧騒が聞こえてくるような光景は、時間を忘れて一つ一つ食い入る様に見てしまいます。
京都の町をどういうルートでどのように進んだか等、地図入りで解説した「行幸のあらまし」、特設桟敷や町屋で見物する人々の見どころを説明した「沿道につどう人々」、江戸初期の装いの特徴を解説した「絢爛たるよそおい」といった"見どころ"がパネルでわかりやすく解説されていて参考になります。
また、後水尾天皇の父・後陽成天皇ゆかりの唐物茶入、後水尾天皇ゆかりの香炉、徳川三代将軍・家光ゆかりの茶の湯釜など、住友コレクションから二条城行幸図ゆかりの数々も展示されています。
展示室Ⅰには、その他にも宮川長春「遊女図鑑」、前期のみ3/26(日)までの展示で、本来農民の生活に基づき稲作と切り離せない神事だった花見、そんな風俗を主題にした「扇面散・農村風俗図屏風」(江戸時代 17世紀)ほか、"春の彩 "をテーマに見応えのある品々が展示されています。
余談ですが、私は茶道も嗜まない、茶道具の事も全く知らないので、茶道具や器関連は割とササーッと通過するだけなんですが、この展示では掛け軸と細々とした茶道具などの展示バランスというか、配置がとても美しく(什器と展示物との色合いもあるのだろうけれど)、"ひとまとまり"が場面や物語を感じるような、絵になっているような展示で、とてもきれいです。まさに"しつらえ"の展示。 ホールには、桜が描かれた掛け軸と並び、わずかに間を置いて展示されている花瓶。桜の花が散りばめられたように浮き上がる伝佐々木庄次郎「半磁器桜花模様花瓶」。この最小限のさっぱり空間が素敵。
そして"茶会を彩るおもてなしの調度"がテーマの展示室Ⅱ。 こちらで目を惹くのは、展示室正面の菊池容斎「桜図」の掛け軸。
当時の上野寛永寺前庭の桜を描いたものだそうで、寄って見ると小さな花弁の1枚1枚まで描きこまれ、引いて見ると咲き誇る姿は堂々としたもの。桜が満開の時期の、匂いや空気が伝わってくるよう。この「桜図」は、どうやら同じ構図の画が2点あるそうで、この1点は最近になって見つかったもので初公開。この作品も3/26(日)までの前期のみの展示です。
また、黒田清輝を師とし藤田嗣治と同級だったという、香田勝太 春秋草花図のうち「春」。これは何と油彩の屏風。しっかりと描かれた満開の花々に小さなスズメも配されていて、全体として落ち着きがあるもののあでやか。
展示室Ⅱには、奥にチラっと見えるのだけれど、コチラにこの2作品について書かれている、モネの「モンソー美術館」「サン=シメオン農場の道」、そして一見油彩のように見える、そして見れば見るほど気の遠くなる織物、川島織の川島甚兵衛「猟犬図額」、など。モネ作品は日本にまだ印象派が紹介される以前のものとのことで、第15代当主住友吉左衞門友純(春翠)がヨーロッパ視察で買い付けたそう。
今や日本人にも大人気の印象派、そんな人気どころか作品自体が入って来ていなかった頃のこの目利き。住友家、素晴らしい。
名品の履歴書 泉屋博古館 川島甚兵衛「猟犬図額」の脇の壁面にちらっと写っている映像は、在りし日の住友家別邸の映像が投影されていて、時代や財力が感じられて興味深いです。
映像と言えば、ホールには「二条城行幸図屏風」をデジタル映像で細部まで拡大し、その世界と見どころを解説した12分の映像も見ることが出来ます。せっかくなので大スクリーンでじっくりと見たいところだけれど、目玉の屏風を鑑賞する予習や復習(笑)として是非。
どうでしょう、もうすぐそこまで来ている春を、一足先に感じることが出来る大人の展覧会。
3月、4月とギャラリートークも開催されるようなので、見どころや背景など解説を聞いて鑑賞すると、もっと深く鑑賞することが出来ますね。私もその日に合わせてもう一度行ってみたいなぁ、前期の「桜図」をもう一度見たいけれど、後期も見てみたいし…あら大変…などと思う展覧会です。
屏風にあそぶ春のしつらえ ―茶道具とおもてなしのうつわ
会場:住友コレクション 泉屋博古館分館
〒106-0032 東京都港区六本木1-5-1
03-5777-8600(ハロ-ダイヤル)
会期:2017年2月25日(土)-5月7日(日)
《前期》2月25日(土)-3月26日(日)
《後期》3月30日(木)-5月7日(日)
開館:午前10時00分~午後5時00分(入館は4時30分まで)
月曜休館 (3/20は開館)、3/21、3/27-29(展示替のため)
※ 掲載写真は美術館より特別に許可をいただいて撮影しています
つい最近描かれたのではないかと思うほど保存状態が良く、描かれている行幸の列と群衆は総勢3000人以上、衣装、髪形、持ち物など、これでもか!というほど丁寧に書き込まれたディテールが鮮明で、行列が動きだし人々の喧騒が聞こえてくるような光景は、時間を忘れて一つ一つ食い入る様に見てしまいます。
京都の町をどういうルートでどのように進んだか等、地図入りで解説した「行幸のあらまし」、特設桟敷や町屋で見物する人々の見どころを説明した「沿道につどう人々」、江戸初期の装いの特徴を解説した「絢爛たるよそおい」といった"見どころ"がパネルでわかりやすく解説されていて参考になります。
展示室Ⅰには、その他にも宮川長春「遊女図鑑」、前期のみ3/26(日)までの展示で、本来農民の生活に基づき稲作と切り離せない神事だった花見、そんな風俗を主題にした「扇面散・農村風俗図屏風」(江戸時代 17世紀)ほか、"春の彩 "をテーマに見応えのある品々が展示されています。
余談ですが、私は茶道も嗜まない、茶道具の事も全く知らないので、茶道具や器関連は割とササーッと通過するだけなんですが、この展示では掛け軸と細々とした茶道具などの展示バランスというか、配置がとても美しく(什器と展示物との色合いもあるのだろうけれど)、"ひとまとまり"が場面や物語を感じるような、絵になっているような展示で、とてもきれいです。まさに"しつらえ"の展示。
当時の上野寛永寺前庭の桜を描いたものだそうで、寄って見ると小さな花弁の1枚1枚まで描きこまれ、引いて見ると咲き誇る姿は堂々としたもの。桜が満開の時期の、匂いや空気が伝わってくるよう。この「桜図」は、どうやら同じ構図の画が2点あるそうで、この1点は最近になって見つかったもので初公開。この作品も3/26(日)までの前期のみの展示です。
今や日本人にも大人気の印象派、そんな人気どころか作品自体が入って来ていなかった頃のこの目利き。住友家、素晴らしい。
名品の履歴書 泉屋博古館
映像と言えば、ホールには「二条城行幸図屏風」をデジタル映像で細部まで拡大し、その世界と見どころを解説した12分の映像も見ることが出来ます。せっかくなので大スクリーンでじっくりと見たいところだけれど、目玉の屏風を鑑賞する予習や復習(笑)として是非。
どうでしょう、もうすぐそこまで来ている春を、一足先に感じることが出来る大人の展覧会。
3月、4月とギャラリートークも開催されるようなので、見どころや背景など解説を聞いて鑑賞すると、もっと深く鑑賞することが出来ますね。私もその日に合わせてもう一度行ってみたいなぁ、前期の「桜図」をもう一度見たいけれど、後期も見てみたいし…あら大変…などと思う展覧会です。
屏風にあそぶ春のしつらえ ―茶道具とおもてなしのうつわ
会場:住友コレクション 泉屋博古館分館
〒106-0032 東京都港区六本木1-5-1
03-5777-8600(ハロ-ダイヤル)
会期:2017年2月25日(土)-5月7日(日)
《前期》2月25日(土)-3月26日(日)
《後期》3月30日(木)-5月7日(日)
開館:午前10時00分~午後5時00分(入館は4時30分まで)
月曜休館 (3/20は開館)、3/21、3/27-29(展示替のため)
料金:一般 800円(640円)/ 学生600円(480円)/ 中学生以下無料
20名様以上の団体の方は( )内の割引料金
by sohla
| 2017-02-26 16:27
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