2012年 07月 15日
紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち
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東京ミッドタウンのサントリー美術館で開催中の紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-展を見に行って来ました。
沖縄復帰40周年記念の展覧会。復帰から「もう」40年というか、「まだ」40年というか。
EXPO’75の当時、白地に海っぽい文様が描かれた記念鉛筆を何故か持っていて、そこに書かれた「めんそーれ」だったか何だったかの言葉は、私が知った初めての沖縄の言葉。そうそう、あの当時の母のテニス友達に古波倉という姓の方がいて、私が知った初めての沖縄の方(といっても、もうずっと東京に住んでいらっしゃったようなのですが)。あ、さらにその方のお嬢さんは、私と同年代で名前の読みが同じだったような・・・。私のようなのっぺり弥生人とは違って目がクリッとして南方系の可愛いリス(笑)みたいで、もう顔の造作が全然違いましたっけ。
そうは言っても、当時の私は「沖縄」と聞いても余りイメージも湧かず、考えもせず、私が住んでいる外の世界のこと(昔の小中学生の住む世界なんてまだまだ狭かったし)。長いこと色々な独自性なども全く知らないで過ごして来たので、沖縄の音楽・芸能・文学・食文化など文化を知りはじめ興味を持ったのもず~っと後になってから。もちろん、この紅型についても、これだけ多くの博物館に所蔵されているような本物を見たのも、これが初めて。
この前見に行ったKATAGAMI展と同じで、インドネシアのバティック、日本の手拭い、友禅も、そしてこの紅型も、道具造り、型紙彫り、染付けと本当に細かい作業。
会場の途中、制作工程の30分ビデオの中で紹介されていた、ココの作業道具の中に書かれている「ルクジュー」。島豆腐を乾燥させて10センチ四方まで凝縮、表面をカンナで削って作った型彫りの下敷き。つまり豆腐から作ったカッティング・マット。マットより厚みがあるので「台」みたい。刃の当り具合はどんななんでしょうかね。沖縄らしい道具です。その他、沖縄の竹と女性の髪の毛で作る筆、福木(ふくぎ)の老木から生まれるあの鮮やかな黄色など、紅型を良く知らない私にとっては「なるほど~」「へぇ~」「うんうん」「そうそう」と見入ってしまう、興味深いビデオです。
紅型というと、いかにも亜熱帯に映える明るい色使いで舞台衣装的なイメージがあるのだけれど、琉球王朝時代、王家、王族、士族のみ着用が許されたとか、階級によって図柄や色が貴族と士族とに色別されということならば、やはり"ここぞ"という時の"衣装"的な感じではあったんでしょうかね。でも、展示されていた着物の中には、色褪せなのか年代なのか、いい具合に落ち着いた色合いでなかなか味があるものも。素材の多くが苧麻や綿なのも南国らしいかと。ふと、絹は余り使われなかったんだろうかとか、当時の庶民はどんなものを着ていたのだろうか・・・などと考えたり。
色柄がズレないようにきっちりと裏表染めたものなんてのもあって、バティックのチャップ(型押し)でも両面を染めたのがあるけれど、紅型もわざわざそういう手間を掛けたものがあるんですね。型紙を使って糊で防染するけれど、だからと言ってバティックや小紋のようにズブッと染料に浸して染めるのではなくて、結局は1つ1つの柄を多色の顔料で塗っていくのは、わざわざ型紙を使って糊防染する、その一手間が多いステンシル?もしくは型友禅?そんな感じなのかなぁ、と。
確かに色の組み合せ顔料の発色、衣装の形から「沖縄っぽい」と感じるのだけれど、良く見ると文様自体は流水や菖蒲、桜、葵などの花に鳥など普通に大和っぽいもの、鶴亀みたいな中国の吉祥文様と、沖縄固有のモチーフというわけではないんですね。色々な立場や思いや向いている方向などからだったんでしょうか。今でこそ沖縄らしいモチーフの紅型があるけれど、ふとココで取り上げた照屋勇賢氏の話を思い出しました。
ちなみに、この作品は東京・赤坂の米大使公邸に、昭和天皇とマッカーサーの歴史的写真が撮られた部屋、二人が立ったまさにその場所に、当時の彼の展覧会(今回の展覧会ではありません)後も公邸が借り受ける形で飾られているそう。
展覧会で展示されている紅型は国宝も含め、歴史や時代も感じる古典的な正統派?紅型。確かに職人さんの話もわかる気がするけれど、一方で、紅型の色合いや文様の明確さ、手法やある意味ポップなところは、異なった時代や異なった世界の様々なモチーフを同時に混在させて、紅型として調和させて見せることにうってつけの工芸なんじゃないかと思いながら、今回展示されている琉球王朝の紅型を見てまわってました。
王朝と言っても煌びやかとはちょっと違う、でも鮮やかで生き生きとした染物を見たい方は、7/22(日)までサントリー美術館へ。この後、大阪市立美術館:2012年9月11日(火)-10月21日(日)、名古屋・松坂屋美術館:2012年11月3日(土・祝)-11月25日(日)と巡回するようですよ。
沖縄復帰40周年記念の展覧会。復帰から「もう」40年というか、「まだ」40年というか。
EXPO’75の当時、白地に海っぽい文様が描かれた記念鉛筆を何故か持っていて、そこに書かれた「めんそーれ」だったか何だったかの言葉は、私が知った初めての沖縄の言葉。そうそう、あの当時の母のテニス友達に古波倉という姓の方がいて、私が知った初めての沖縄の方(といっても、もうずっと東京に住んでいらっしゃったようなのですが)。あ、さらにその方のお嬢さんは、私と同年代で名前の読みが同じだったような・・・。私のようなのっぺり弥生人とは違って目がクリッとして南方系の可愛いリス(笑)みたいで、もう顔の造作が全然違いましたっけ。
そうは言っても、当時の私は「沖縄」と聞いても余りイメージも湧かず、考えもせず、私が住んでいる外の世界のこと(昔の小中学生の住む世界なんてまだまだ狭かったし)。長いこと色々な独自性なども全く知らないで過ごして来たので、沖縄の音楽・芸能・文学・食文化など文化を知りはじめ興味を持ったのもず~っと後になってから。もちろん、この紅型についても、これだけ多くの博物館に所蔵されているような本物を見たのも、これが初めて。
この前見に行ったKATAGAMI展と同じで、インドネシアのバティック、日本の手拭い、友禅も、そしてこの紅型も、道具造り、型紙彫り、染付けと本当に細かい作業。
会場の途中、制作工程の30分ビデオの中で紹介されていた、ココの作業道具の中に書かれている「ルクジュー」。島豆腐を乾燥させて10センチ四方まで凝縮、表面をカンナで削って作った型彫りの下敷き。つまり豆腐から作ったカッティング・マット。マットより厚みがあるので「台」みたい。刃の当り具合はどんななんでしょうかね。沖縄らしい道具です。その他、沖縄の竹と女性の髪の毛で作る筆、福木(ふくぎ)の老木から生まれるあの鮮やかな黄色など、紅型を良く知らない私にとっては「なるほど~」「へぇ~」「うんうん」「そうそう」と見入ってしまう、興味深いビデオです。
紅型というと、いかにも亜熱帯に映える明るい色使いで舞台衣装的なイメージがあるのだけれど、琉球王朝時代、王家、王族、士族のみ着用が許されたとか、階級によって図柄や色が貴族と士族とに色別されということならば、やはり"ここぞ"という時の"衣装"的な感じではあったんでしょうかね。でも、展示されていた着物の中には、色褪せなのか年代なのか、いい具合に落ち着いた色合いでなかなか味があるものも。素材の多くが苧麻や綿なのも南国らしいかと。ふと、絹は余り使われなかったんだろうかとか、当時の庶民はどんなものを着ていたのだろうか・・・などと考えたり。
色柄がズレないようにきっちりと裏表染めたものなんてのもあって、バティックのチャップ(型押し)でも両面を染めたのがあるけれど、紅型もわざわざそういう手間を掛けたものがあるんですね。型紙を使って糊で防染するけれど、だからと言ってバティックや小紋のようにズブッと染料に浸して染めるのではなくて、結局は1つ1つの柄を多色の顔料で塗っていくのは、わざわざ型紙を使って糊防染する、その一手間が多いステンシル?もしくは型友禅?そんな感じなのかなぁ、と。
確かに色の組み合せ顔料の発色、衣装の形から「沖縄っぽい」と感じるのだけれど、良く見ると文様自体は流水や菖蒲、桜、葵などの花に鳥など普通に大和っぽいもの、鶴亀みたいな中国の吉祥文様と、沖縄固有のモチーフというわけではないんですね。色々な立場や思いや向いている方向などからだったんでしょうか。今でこそ沖縄らしいモチーフの紅型があるけれど、ふとココで取り上げた照屋勇賢氏の話を思い出しました。
私は沖縄育ちですが、地元の私でも紅型というのはあまりきちんと見たことがなかったんです。しかしあるとき、首里城で観光客向けに色とりどりの紅型の着物が展示されていて、初めてきちんと紅型を見た。そしてそこでは、紅型とは沖縄の美しい自然の姿が表現されていると説明にありました。でも見た途端、不思議に思ったのです。「こんな自然が今の沖縄のどこにあるんだろう?」。
私の知っている沖縄は、全然ここに描かれているのとは違う。じゃあ「今の沖縄の自然」を紅型にプリントしたらどうなるだろうかと思って模様だけを変えてみたんです。伝統的な沖縄の花とパラシュートで降りてくるアメリカ兵と楽しげにさえずる鳥と戦闘機が並列して描かれた美しい紅型をつくってみました。
制作にあたっては地元の職人さんに手伝ってもらったのですが、最初はどこも相手をしてくれませんでした。「あなた、戦争終わって何もないところからみんなが紅型復興した気持ちわかるの?沖縄の美しい自然、花を見てみんなやり直そうと思った。その気持ちを受け継いでいるのにどうしてそこに戦闘機だのパラシュートをわざわざ入れるの?」。その気持ちは十分汲みとった。でもそれを分かったうえで聞きました。「でもその自然、どこにあるんですか?」。その現実を表現して伝えることも大事なのです。そう何度も説明してわかってもらいました。それで協力が得られ、実現したのがこの作品です。
展覧会で展示されている紅型は国宝も含め、歴史や時代も感じる古典的な正統派?紅型。確かに職人さんの話もわかる気がするけれど、一方で、紅型の色合いや文様の明確さ、手法やある意味ポップなところは、異なった時代や異なった世界の様々なモチーフを同時に混在させて、紅型として調和させて見せることにうってつけの工芸なんじゃないかと思いながら、今回展示されている琉球王朝の紅型を見てまわってました。
王朝と言っても煌びやかとはちょっと違う、でも鮮やかで生き生きとした染物を見たい方は、7/22(日)までサントリー美術館へ。この後、大阪市立美術館:2012年9月11日(火)-10月21日(日)、名古屋・松坂屋美術館:2012年11月3日(土・祝)-11月25日(日)と巡回するようですよ。
by sohla
| 2012-07-15 19:14
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