2008年 08月 24日
【2008Bali】⑥ 心のやわらかさ
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でもまぁ、せっかくなので浜の方まで歩いて行って見ようと歩いて行くと、細長くヤシの木をくり貫いたものに既に海水をろ過して濃度の濃い(らしき)ものが天日干しされて並んでます。ふ~ん、なるほどね。
で、どこから集まって来たのか10数人の子供達が私達を取り囲むようについて来ます(キターッ)。「買って、買って」と、手に持ったお土産物用の小さな塩を私に突き出しながら。土産物売りに囲まれるのはバリ島の観光地で遭遇することなので、まぁ買う気が無ければ「要らないよ」とか「もう他で買ったから」と無視するのが一番なんですけれど、結構これが子供とは言え(子供だからか?)不愉快な程にしつこいんですよね。相手も必死で恥じらいも遠慮もないですから。別にムゲにする気はないけれど、かと言ってそうかそうかとヘラヘラしていても埒が明かないわけです。
私はず~っと何も喋らず子供達の顔も見ずに歩いていたので、子供達は「この人インドネシア語喋れる?」とワヤンに聞いてみたり様子を覗いつつ買って買って攻撃をしている感じで、ワヤンはバリ人なのでそうは言っても子供達の境遇が可哀相とういう気持ちがある、でも私が嫌がっているのも分っているので、「この人はインドネシア語は喋れないよ・・・」とか「買わないよ・・・」と優しく言いながら、私と子供達との板挟みになって「どうしよう」と言う感じですね。
だいぶ前にバリ人の英語の先生と、各国の英語教育の状況を視察しているアメリカ人女性と私とでキンタマーニに行った時のこと、素晴しい景色を眺めている私達に子供達がワラワラと寄ってきて、断っても断っても写真やポストカードを突きつけてきて買え買え攻撃ってことがありました。その時、暫く黙っていたアメリカ人女性が「お願いだからこの美しい景色を楽しむのを邪魔しないでちょうだい!」と、子供達に向かって言うでもなく独り言の様に、景色に向かって両腕を広げながら、でも大声で言ったのを思い出しました。勿論、子供たちはそれで諦めることはしませんでしたが。
波打ち際まで来たところで歩くのを止めると、子供たちの売り込みはヒートアップ。私は香港の黄大仙(ウォンタイシン)廟の前でたむろしているオババ達が「お金をくれ」と次々に手を伸ばし、人の洋服を引っ張って来た光景を思わず頭に浮かべながら、10数人の子供達が口々に買って買ってと塩を持った手を私に向けて伸ばすのを暫くただジッと見てました。「学校に行くお金がないかコレ買って」「教科書を買いたいからコレ買って」と口々に私に訴えかけて来るわけです。ワヤンは「僕は1人で塩を買いに戻るから、5分後に戻って来て」と訳のわからないことを言って戻って行っちゃって、要は子供達が可哀相で見てられないから、私1人が浜に残って子供達を引き付けておいて何とかしてってことなんですよね。バリ人らしいと言えばバリ人らしい対処方法ですが。
実際、根競べみたいなものなので大抵は知らんぷりしたり、「御免ね、要らないの」と言い続けると相手も諦めて去っていく、もしくは他のターゲットに移って行くってことが多いんですけれど、「学校に行くお金がないかコレ買って」「教科書を買いたいからコレ買って」と言い始めたのを聞いて、可哀相どころかムカッと来てしまった私。逆効果だったね、子供たちよ(笑)。
こりゃ、黙っててもしょうがないな、でも相手は子供だしなと思いながらも、思わずインドネシア語で「私は買わないから、他の人を探しなさいっ」と言ってしまったのでした。本当は、「学校や教科書のことは父さんやお母さんに言いなさい」と言いたいのをグッと堪えて。
子供達は私がインドネシア語を喋らないと思っていたのに喋ったから驚いたのか、ハッキリとキッパリと強く断られたことが怖かったのか判らないですけれど、キョトンとした顔つきで無言になり、ヨソヨソと私から離れて行ったのでした。
「御免ね、要らないの」の段階で済めば良かったんですけれど、こんな風に追い払う私もちょっと自己嫌悪ではあるんですよね。あの子供達のしつこさやら自己嫌悪やらで暫く悶々と浜を歩いていると、遠くでワヤンが「おーい」戻っておいでと手を振っているのが見えたので、何だかなぁ・・・と言う気持ちで戻って行くと、今度はワヤンがさっきの子供達に囲まれてるのが見えるじゃないですか。
でも、何だかちょっと違うんです。
ワヤンが子供達に囲まれてしまっているというよりは、子供達の輪の中でワヤンが何かをやっているという感じでしょうか。近づいて行って思わずその光景を眺めて微笑んでしまったんですが、何と彼は子供達の輪の真ん中で、日本語の数字の言い方を先生の様に教えていたんですよね。1人ずつ子供達を指して、
「satu!(サトゥ)イチ!」
「dua!(ドゥア)ニ!」
「tiga!(ティガ)サン!」
と11人まで。1人1つずつ日本語の数字を割り当てられた子供達。
「じゃぁ、イチから!」とワヤンが「satu!」と言うとイチを割り当てられた子供が「イチ!」と言い、「dua!」と言うとニを割り当てられた子供が「ニ!」と言い・・・。さながら青空ワンポイント日本語教室ですよね。子供達は何だか判らないけれど興味シンシンといった感じで、呆気に取られながもワヤンに言われた通りに一生懸命答えてるんですよね。あの、さっき買え買え攻撃でまとわり付いていた子供達、私が追い払った子供達が。
その光景を眺めながら、ムカッとしてもストレートに相手にぶつけない、ニコッと微笑んでやんわりお断りをする、事を荒立てないコミュニケーションというのはバリ人(インドネシア人)のお得意とするところ、彼らのマナーなんだとは思っていましたけれど、追い払うことでしか対応出来なかった私の心は何とちっちゃいことかと考えてしまいましたよね。子供とは言えしつこく物売りに囲まれて寛大になれるかなれないかは、相手に対する慈悲の心が優先なのか、自分の気持ち優先なのかの違いなのかもしれないですけれど、何にせよ心のやわらかさの違いもあるんだろうな、って。う~ん、やるなぁワヤン。完敗。
こういう彼らの中に積極的に飛び込んで行って、最終的には惹き付けてしまうコミュニケーションが出来るのは何もバリ人だからと言う事ではなく、ワヤン個人の(人懐こく調子がいい、笑)キャラクターに因るところが大きいのかもしれないですね。もし他のバリ人の知人と同じ場面に遭遇したら、ある人は僅かばかりのお金を渡して済ますかもしれない、ある人は私に1つでも買ってあげるように勧めるかもしれない、ある人は黙ったままかもしれない・・・身近な知人を思い浮かべてそんなことを考えてました。
「じゃ、忘れないでちゃんと覚えておくんだよー」
とワヤンが言いながら私達がその場を離れて行くその背中に、子供達がダメ押しの「塩は買う?」の声(笑)。今度は「Tidak, Terima kasih」(要らないの、ありがとね) と言うと、子供達もそれ以上は何も言わず、付いても来ませんでした。
by sohla
| 2008-08-24 07:33
| それもバリ、これもバリ
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